リブリーザーコース事前学習の補助1 Mk6の概要

事前学習の補助について

伊良部島マリンセンター開催のPADI リブリーザーコースへのご参加ありがとうございます。

リブリーザーはみなさんの水中での行動範囲を広げてくれる画期的な呼吸装置です。リブリーザーは膨大な水中滞在時間を提供してくれます。延長された水中滞在時間は新しい発見の機会を作ってくれることでしょう。今まで片道20分の範囲しか探索できなかったダイバーは、その3倍以上の距離を探索できるようになります。水中カメラマンは時間をかけてゆっくりゆっくりと水中生物に忍び寄れるようになります。海が大好きでたまらないダイバーなら、朝食後すぐに潜水を開始して昼食のために浮上してくるというようなことも可能になります。

 

本稿作成の目的

リブリーザーコースにこれから参加されるみなさんにとってリブリーザーは、おそらく、未知の呼吸装置なのではないでしょうか。実物を見たことがないという人もいるかもしれません。そこで、コース参加者が POSEIDON Mk6 ユーザーマニュアル日本語版の理解を助けるヒントとして本稿をまとめることにしました。

 

本稿が対象にしているダイバーは・・・

本稿が対象にしている読者は、リブリーザーコースに参加するために自宅学習をしているダイバーで、PADI OWD と PADI EANx SP マニュアルをきちんと読んだ人を対象としています。

リブリーザー(再呼吸装置)ってなに?

最初の写真のダイバーは開放式(オープン・サーキット)呼吸装置を使ってダイビングをしています。背中のシリンダーには一人用電話ボックスほどの空気が高圧で詰め込まれていて、ダイバーはタンクの空気を一口吸ってはブクブクと水中に捨て、また一口吸ってはブクブクと水中に捨てています。

次の写真は循環式(リブリーザー)呼吸装置を使ってダイビングをしています。リブリーザーはとても効率の良い呼吸装置で、吐いた空気を水中に捨てることはしません。吐いた空気から二酸化炭素を取り除き、必要な酸素をちょっとだけ追加してガスを再生してくれます。ですから、呼吸のためにリブリーザーからブクブクと泡が出ることはありません。

 

リブリーザーはオープンサーキットシステムより装備が複雑です。吐いた息を背中の装置に送るホースや、吐いた息を一時的に溜めておく袋(カウンターラング)が取り付けられています。このようなホースとカウンターラングをまとめて呼吸ループと呼んでいます。

よく使う言葉:呼吸ループまたはループ、オープン・サーキット (OC)

CCRとSCR

リブリーザーは不足した酸素を追加する装置ですが、追加の方法によってCCRとSCRに分類できます。CCRはクローズド・サーキット・リブリーザーの略で、日本語では閉鎖式循環呼吸装置です。SCRはセミ・クローズド・サーキット・リブリーザーの略で、日本語では半閉鎖式循環呼吸装置です。

CCRには2種類のガスが組み込まれています。

ひとつは酸素です。このガスはダイバーが代謝で消費した酸素を補充したり、呼吸ガスの酸素濃度を調整したりする役割を持っています。もうひとつはディリュエントガス(希釈剤)です。このガスは主に呼吸ガスの体積を一定に保つための役割を持っています。ディリュエントガスには空気、ナイトロックスガス、トライミックスガスを使用することができますが、PADI リブリーザーコースやPADI Tec40CCRコースでは空気を使います。

 

体積を保つとは、、、

ガス(気体)は潜降とともに水圧によって体積が縮小していきます。潜降中、この現象による浮力損失を補うために、皆さんはプシュッとBCDに空気を入れていると思います。水面で肺を膨らませるのに十分だった呼吸ガスも、BCDと同じように潜降とともに体積が小さくなり、肺を十分に膨らませることができなくなってしまいます。そこで、BCDへの吸気のように、リブリーザーではディリュエントガスを呼吸ループに注入して呼吸ガスの体積を維持させています。

一般的にSCRは1種類のガスを使います。

ナイトロックスガスです。酸素を補充するときも、呼吸ガスの体積を維持させる時も、ナイトロックスガスが使われます。リブリーザーの呼吸ループにはダイバーの1呼吸分のガスがあれば良いのですが、ナイトロックスガスを使うSCRは、酸素補充の時に酸素とともに窒素もループに注入してしまいます。このタイミングで注入される窒素はダイバーにとっては不要なガスで、ダイバーに余分な浮力を与えてしまいます。また、呼吸ガス内の窒素が多いと酸素の濃度を維持させるために多くの酸素が必要になってしまいます。そこで、SCRはこの余分なガスをときどき排気しています。SCRが半閉鎖式と呼ばれるのはこのためです。

よく使う言葉:CCR、ディリュエント、クローズド・サーキット (CC)

Mk6の外観

私たちがコースで使用するリブリーザーはPOSEIDON社製のMk6やSE7ENです。ここからはMk6やSE7ENの話です。Mk6とSE7ENは基本的なシステムが同じなのでまとめてMk6と書くことにします。共にCCRです。

 

まずはMk6の構成部品を紹介しましょう。ダイバーの右肩側にくる装備が右、左肩側にくる装備が左です。

 

ダイバーの口元からガスの流れの順番に、

  1. マウスピース
  2. 右前ホース
  3. Tポート
  4. 右カウンターラング
  5. 右後ホース
  6. スクラバーハウジング
  7. 左後ホース
  8. Tポート
  9. 左カウンターラング
  10. 左前ホース

そしてマウスピースに戻ります。

 

背中の中央にある黒い円筒形のスクラバーハウジングの中には、スクラバーと呼ばれる二酸化炭素の吸着剤が入っています。スクラバーハウジングの右側には3Lの酸素シリンダー、左側には3Lのディリュエントガスが取り付けられています。それぞれのガスはスクラバーハウジングの上部に配置された電子モジュールに送られます。電子モジュールにはガスを制御するソレノイドバルブが埋め込まれていて、モジュール内臓のコンピュータにより自動制御されています。

よく使う言葉:マウスピース、Tポート、カウンターラング、スクラバー、電子モジュール

Mk6の頭脳、電子モジュール

電子モジュールには制御用コンピューター、酸素センサー、圧力センサー、温度センサーなどのセンサーが組み込まれていて、ダイバーに最適な呼吸ガスを自動で作り出しています。簡単に言うとMk6は超小型のナイトロックス工場です。

ベストミックス

呼吸ガス内の酸素割合を高くし窒素割合を下げてやると減圧症のリスクは下がります。しかし、酸素割合が高くなると酸素中毒の危険性が高くなりますから、むやみに酸素割合を高めることはできません。そこで、EANコースでは酸素分圧 (PO2) を計算してPO2が1.4を超えない深度範囲でEANxを使うように習ったはずです。

 

国内でよく見かけるEAN32は最大水深33mまで行けるガスです。目的地の深さが33mのダイバーにとっては理想的なガスです。酸素中毒の心配なしで最も窒素割合が少ないガスだからです。でも、目的地が40mのダイバーには危険ですし、目的地が25mのダイバーにとってはもう少し窒素を減らしたいところでしょう。

 

このような「目的深度に最適な混合ガス」をベストミックスと呼びましょう。目的地の水深が33mのダイバーにはEAN32が、25mのダイバーにはEAN39が、40mのダイバーにはEAN27がベストミックスです。

100mでは? おっと、今回のコースを大幅にはみ出してしまいますね。

CCRはベストミックスを作り続ける

ベストミックスを背負ってダイビングをするのはOCダイバーにとっては理想的なことでしょう。目的の水深で最も長くノンストップダイビングをすることができるからです。しかし、その道中はベストミックスではありません。その道中には道中の水深に合わせたベストミックスがたくさんあるはずです。

 

CCRは圧力センサーで深度を探り、酸素センサーで酸素濃度を測り、潜水時間を加味しながら常にベストミックスを保とうとするシステムです。このシステムによりダイバーのノンストップ限界は延長され、浮上中のダイバーの体からは、単一ガスの場合とは比較にならない速さで窒素が排出されていきます。このベストミックスを作り出すというシステムはCCRの最も優れた特徴と言えるかもしれません。

 

※ Mk6のPO2は 水深0m〜15mまでは 0.5 ≦ PO2 ≦ 1.2 の範囲で、15m〜は PO2 = 1.2 になるように制御されています。PO2の最大値が1.4ではなく1.2になっているのは安全のためのマージンです。

よく使う言葉:PO2

今回はCCRがどのような働きをする装置なのか概観を書いてみました。かなり大雑把でしたが、なんとなくイメージをつかんでいただけましたでしょうか。

次回はそれぞれのパーツの働きについてもう少し詳しく書いていきたいと思います。