Mk6 リブリーザーでダイビングする 第2回 水圧下でのガス

このページではリブリーザーの取り扱いや関連する事柄の特徴的な部分のみを説明しています。

特徴的な部分をわかりやすく説明するために命に関わる重要な要素の説明が除かれている部分があります。また、このページは計算や解釈の間違いや誤植があることを前提にお読みください。

 

実際にダイビングを行う場合はあなたが受けたトレーニングの範囲を超えてはいけません。

正しい潜水計画の立て方や必要な技術と装備に関する正確で詳細な情報は、ダイビング指導団体が発行するダイビングマニュアルに記載されています。ダイビングマニュアルに従わず、このページの説明を基礎に実際のダイビングを計画実施することは命に関わる重大な危険を招きます。

水圧下でのガス

圧力と体積、密度

皆さんがダイバーなら、最初のオープン・ウォーター・ダイバー・コースで海水圧のことや圧力と気体の体積の関係を学んだことでしょう。まだダイバーでない皆さんでも、PADIの体験ダイビングコースであるディスカバー・スクーバ・ダイバー・プログラムに参加したことがある人なら、フリップチャートで圧力と気体の体積の関係について教えてもらったことと思います。

 

図はダイビングの教科書でよく目にする圧力と気体の体積と密度の関係を表したものです。圧力は押す力だと考えてください。陸上で私たちが受けている空気の圧力は約1気圧です。これは1cm × 1cm の小さな四角形に1.03kgの力がかかっていることと同じです。この1.03kgというのは1cm2の上に乗っている細長い大気の重さです。海水は1cm × 1cm × 10m でほぼ1.03kgの重さですから、水深10mでダイビングするダイバーには2気圧の力がかかっていることになります。陸上の1気圧に海水10m分の1気圧を足した結果が2気圧です。

 

ところで、空気などの気体は圧縮することができます。元の2倍の力で押しつぶせば体積は1/2になります。3倍の力で押しつぶせば体積は1/3になります。「温度が一定なら、気体の体積は圧力に反比例する」これはボイルの法則と呼ばれています。

でも、2倍の力で押しつぶされた気体の分子の半分がどこかに逃げていったわけではありません。分子の量は変わらないまま、半分の広さのところに押し込められただけです。圧力をかければかけるほど狭い空間に押し込められて、気体の密度は高くなっていきます。

 

図の右列は浅いところも深いところも体積が変わらない図です。深さで違うのは青い点の数だけです。この図は人間の肺をイメージしました。人間の肺は深さによって自由に縮んだり伸びたりすることはできません。肺はいつも同じ体積を保つ必要がありますから、水深50mでは陸上の6倍の空気が押し込められているということを表しています。

窒素酔いと酸素中毒

ところで、水深50mまでいったダイバーがそれほど密度の高い空気を吸っても大丈夫なのでしょうか?

 

答えはNo。

圧力下で高圧の空気を吸うとダイバーは酔ったような症状を引き起こすことがあります。以前は主に窒素が影響していると考えられており、「窒素酔い」と呼ばれてきました。ダイバーの体質や体調も窒素酔いと関わっていることから、どの深さになると酔いが始まるのか明確な深さは決まってはいませんが、30mを超えると始まり、40mを超えるとほとんどのダイバーに影響が出ると考えられています。(現在は酸素にも同じような作用があることがわかってきたので、併せてガス昏睡と言っています)

 

酸素は酸素中毒を引き起こします。肺活量が減ったり呼吸困難に陥ったりする肺の酸素中毒と、嘔吐・めまい・痙攣などを引き起こす中枢神経系の酸素中毒(急性酸素中毒)があります。急性酸素中毒は高圧下での酸素吸入が原因で起こるためにダイバーとは深い関係があります。例えば純酸素でダイビングをした場合には水深6mを超えると急性酸素中毒のリスクが高まると言われています。

ガス分圧という考え方

このような問題をガス成分の割合で判断することは難しいことです。

例えば空気の場合は酸素が21%で窒素が79%です。この割合はどこまで潜っても変わることはありませんが、水深66mを超えると急性酸素中毒のリスクは高まります。でも、呼吸しているガスに含まれる酸素は相変わらず21%です。(リブリーザーのように水中でガスを混合していく場合は割合を変えることができます)

 

 

そこで、全体の圧力に比例して変化するガス分圧が大切な指標になってきます。
空気のような混合ガス全体が受ける圧力は、混合ガスに含まれるそれぞれのガスが分担しているという法則です。

 

例えば陸上での空気を考えてみます。陸上を1気圧とすると混合ガス全体(空気)が受ける圧力は1気圧です。空気中の酸素は21%なので酸素が受け持つ分圧は1気圧×0.21=0.21気圧です。窒素は79%なので窒素が受け持つ分圧は1気圧×0.79=0.79気圧です。この二つを合計すると混合ガス全体が受けている1気圧になります。

 

水深10mは2気圧ですからガス全体が受ける圧力は陸上の2倍になり、それぞれの分圧も陸上の2倍の数値になります。全体が3気圧となる水深20mなら全ての数値が陸上の3倍です。このように混合ガス全体が受ける圧力によって変化するのが分圧です。

 

窒素酔いはPN2>3.2から、酸素中毒はPO2>1.6からリスクが高まると考えられています。窒素酔いの代わりにガス昏睡を採用するなら、窒素分圧と酸素分圧の合計としてPO2+PN2>4.0を使います。また、実際の潜水計画をたてる場合のPO2の許容範囲はPO2>1.4となっています。

 

※ 分圧は英語で"Partial Pressure"と言いますから酸素分圧は "Partial Pressure of Oxygen"です。上記の例ならPPO2=0.21とかPO2=0.21というような表記になります。窒素分圧の場合はPPN2やPN2です。